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このままうたわせてよ!

SixTONESの田中樹くんを細々と応援しています

田中聖

彼のことは「バンド界の自担」と呼ぶことにした。ちょっと俗っぽいというか、少し使い古された言い回し、という感じがほどよく私の感情になじむ。もっと簡単に言ってしまえば「元担」で、それ以上でも以下でもないのに、どうしてもその単語には収まりきらない感情が湧いてくる。そのためだけに担当を名乗るつもりはないけど、もし「担当」でないと彼について話してはいけないのだとしたら私はいつでも彼の担当を名乗るつもりでいるし、彼の担当を降りたときからずっとそう思ってる。

 

私の言葉が彼のことを好きでいる人の総意だとは思ってほしくない。この2年弱の間ずっと彼のことを好きでいたわけではないし、彼のことを好きな人が私の周りにはもとから少ないから、彼のことを好きでいる人やかつて好きだった人が今現在どう感じているかはあまり想像がつかない。たぶん人それぞれに全然違う気持ちでいるんだろうなと思う。ただただ、私が見た彼の話をしたい。

 

強がりでも「これでよかったんだ」と言える日なんてこないと思ってた。かつての彼自身が言っていたように、彼にとってアイドルは天職で、アイドル以上に似合う職業はないと思ってたし、何よりアイドルでいる彼のことが大好きだった。 

でも私はずっと、彼には主人公になってほしかった。自分がそう思っていたことに気づいたのは最近の話。本当はステージの真ん中に立ってほしいし、自分のパートだけじゃなくてずっと歌っていてほしいし、誰よりも目立つ存在でいてほしいし、客席のみんなが彼に注目していてほしかった。でもそんなのは願ってはいけないことで、ステージに立っているだけで十分輝いているのにそれ以上を望むのは贅沢すぎると、そう思ったのは彼のことを好きになったかなり最初のころのことだと思う。そんな願いを一度は抱いたということすら、それを願うのをやめたことすら私は忘れてた。

 

CDを再生したとき、彼の歌声しか聴こえてこないことに感動した。甘くて強くて、少し鼻にかかったような大好きな歌声。アルバム1枚分、聴こえてくる歌声は彼のものだけだった。プロのミュージシャンが彼の歌声を聴いて、彼にこんな曲を歌わせたい、と考えて作ってくれた10曲。彼がアイドルを続けていたら味わえなかった贅沢。ロックバンドに興味を持つのなんて初めてだから、音楽性とか曲の良し悪しとか、そういう評価のようなところは全くわからないけど、私は彼らの音楽を好きだと思った。それだけで十分だった。

 

彼がかつて立っていた豪華な舞台と比べると圧倒的に狭いステージに現れて、彼はセンターでマイクを構えた。彼が今までバンドのボーカルではなかったことが不思議に思えるくらいにとてもよく似合っていた。

彼自身の言葉を借りれば、とても美しく"落ちぶれた"と思う。

彼がアイドルだったとき、ステージに立つ彼は、アイドルという言葉そのまま偶像のようだった。それがとても美しかったから、この先もずっとそうあってほしいと思わずにはいられなかった。でも一度そのステージを下りて、今改めてステージに立つ彼は、はっきりと形を持っている。血が通った一人の人間が、もうすぐ30歳になる男性が、彼の仲間と一緒にそこにいる。

傷んだ銀髪がスポットライトを浴びてやわらかく光った。彼は彼が今いる場所で、笑って、叫んで、歌って、息をしている。初めて見る彼を見た、と思った。

 

彼らがこれから先、順調に進んでいけるかどうかはわからないし、何かあったときに守ってくれる人も少ないし、もしかしたら明日には全て終わってるかもしれない。でもそんなのはきっとアイドルを続けていても同じで、どうせ同じように不安なら彼が今までとは違うふうに輝く場面を見ることができる新鮮さに感動していたいし、ただ新鮮なだけではないものがある、とも思う。

どの道に進むのが正解だったのかとか、どの道が彼を一番輝かせてくれたのかとか、そんなことは彼自身にすらわからないのかもしれないけど、私は今の彼の生き方について「これでよかったのかもしれない」と言える。だって、アイドルとしての彼に抱いていた夢は、彼がアイドルをやめた途端に全部叶ってしまったから。こんなの、嬉しいと思わずにはいられないんだ。彼の職業が「アイドル」と呼ばれるものかどうかなんて、たぶん大したことじゃない。彼の生き方は今までもこれからもずっと「田中聖」で、それ以上でも以下でもないし、彼のそういう存在の仕方を私はこの先も好きでいるんだと思う。